西暦2000年9月。パフで働いていた4人の内定者のひとりに、フルカワという
関西の大学生がいた。このフルカワが新規開拓営業をするなかで出会ったのが
住友スリーエム(以下、3Mとします)であり、本日の登場人物、3Mの若き
人事採用担当者、永田さんなのであった。
このときの出会いの経緯を『自転車操業物語』でずいぶん昔に書いたことがあ
る。「SS社のNさんとの出会い」というタイトルだった。
書いた当時は、まだ現職の人事担当者だったことからイニシャルで書いたのだ
が、いまでは人事を離れて久しいこともあり(しかもいまは日本を離れている
こともあり)、また実名掲載の許可もいただいているので、今回は、昔の物語
を加筆修正しながら再掲載しようと思う。
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2000年9月14日。
内定者のフルカワとボクは、朝のミーティングが終わってすぐ会社を飛び
出した。
午前10時に、世田谷の用賀に本社のある3M社の人事部にアポイントをも
らっていたためだ。
3M社には、ボクも含めてパフの社員やインターンシップは、それまで一
度も営業訪問したことがなかった。
実は1週間ほど前、フルカワが、パフの資料を「とりあえず」一式送って
いた。
それを先方の担当者がちゃんと目を通してくれており、“顔の見える採用”
というフレーズに興味を持ってくださったのだった。
そして3M社の方から「詳しく話を聞いてみたい」という電話を、フルカ
ワ宛にくれたのだった。
「フルカワァーっ!先方から電話がくるなんて、こりゃ、大いに脈ありだ
ぞ、初受注するぞっ!」
大きな期待をもって、ボクも一緒に行くことにした。
しかし!フルカワと一緒に3M社に向かうボクは、モーレツに機嫌が悪
かった。
なぜか?
●その1
内定者4人は、いつも団子のようにくっついて仕事をしており、遊びやサ
ークル活動のように、ペチャクチャペチャクチャと、緊張感なく仕事をし
ていた。そのことに堪忍袋の緒が切れたボクは、朝のミーティングで彼ら
に怒鳴り散らしたのだった。「仲良し倶楽部じゃないんだ!バカタレ!」
と。
●その2
フルカワは3M社まで「30分あれば着きます」と言っていたのだが、調べ
てみたら、月島駅から用賀駅までの所要時間だけで40分もかかる。そのこ
とが判明したのが、朝のミーティング終了後の9時15分。アポの時間は午
前10時。「馬鹿やろー!!遅刻じゃねぇか!何が30分だ!ちゃんと調べて
おけ!」と怒りまくるボク。
このふたつの理由で、ボクは朝っぱらから完全にブチ切れた状態で、3M社
に向かっていたのだった。
向かう途中、フルカワとは、ほとんど会話を交わさなかった。言葉を発する
と、さらに怒鳴りつけそうな自分がいたからだ。
実はこのフルカワ、この日が内定者研修の、いったんのピリオドの日だった。
彼女(フルカワはいちおう女です)は、関西の大学に通っており、後期の授
業が翌週から始まるため、大阪に帰らねばならなかったのだ。
まだ受注のなかった彼女にとって、この日の3M社が最初で最後の大きなチ
ャンスのはずだったのだ。
用賀駅に着いた。
時間はすでに約束の10時になろうとしていた。ここから3M社まで10分くら
いはかかるであろう。
「おい、フルカワ!すぐに3M社に電話しろ!担当の人に、『10分ほど
遅れてしまいます。大変申し訳ございません』と丁重に詫びるんだぞ!」
フルカワはビビりながら、自分の携帯から電話した。
「く・クギサキさん、3Mさん『大丈夫だから慌てずにおいでください』と
のことでした」
“慌てずに”といわれても10分もの遅刻である。用賀駅の出口から小走りで
3M社に向かった・・・つもりだった。
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あまりに長いので、今回はこのへんで。後編に続きます。
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