1983年3月中旬のある日。
リクルート神田営業所の事務所内。
僕は、営業先のアポリストも枯渇してしまい、朝から電話と睨めっこ状態。
相変わらず受注が全然ない僕は、事務所に座っていることが、いたたまれず、
『営業に行って来ますー!』と、空元気を出しながら、アポもないのに外に
飛び出していきました。
営業所のあった神田須田町から小川町、神保町を通り抜け、気づけば水道橋駅
にほど近い三崎町まで来ていました。
#当時神田営業所には、営業マン用に自転車が用意されており、アポの取れ
ない日は、こうやって神田界隈をチャリンコで放浪していたものでした。
(当時の所長さん、さぼり魔の僕をどうかお許しください!)
ふと見上げると、「○○建築設計事務所」と書かれた看板が目に入りました。
「あー、この会社、このあいだ電話した会社だ…。
たしか、印象はあまり悪くなかったよなー。
よし、いっちょ飛び込んでみるか!」
先方の人事課長Aさんは、突然訪問した僕に少し驚いた様子でしたが、それで
も自分の机の脇の小さな打ち合わせテーブルに通してくれました。
A課長:「うちは大学の先生からの紹介で、結構人が採れるからねぇ、
わざわざリクルートの広告に出さなくてもねぇ…」
焦っていた僕は、
「いや、リクルートブックだけじゃなくて、例えばDMをやらせてもらうと
か、入社案内をつくらせてもらうとか、いろいろお手伝いできることは
あります!是非、何でもいいですからやらせて下さい!!!」
と執拗に粘っていました。
そこへ現れたのが、恰幅の良い50才くらいの男性。
「なかなか、ガンバってますなぁ…。どういうお話ですか?」
と人事課長の隣に腰をおろしてきました。
釘崎:「あっ、は初めまして、私、リクルートのクグサキと申します」
その男性も名刺を出してくださったのですが、その名刺にはなんと
『代表取締役』と書かれておったのでした。
社長:「私が改めてお話をお聞きしましょう…」
僕は無我夢中で、自分が売ることのできるありとあらゆる商品・サービスの説
明を延々1時間くらいおこなったのでした。
社長:「分かりました。じゃ、お付き合いさせていただきましょう」
釘崎:「へっ?」
社長:「まずは、当社の会社案内を作ってもらえますか?
そうですねー、予算は200万円でどうですか?」
釘崎:「に、にひゃふまんーーー!?」
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