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スタッフコラム

人件費/採用費~人事予算計画。人事部門の皆様向け「どこまで経営陣と向き合い、戦略や戦術を考えられていますか? ウェルビーイングとは?」サッカー日本代表・森保監督と人事の親和性

作成日:2023.1.17

こんにちは、ミスターDです。「なにその名前?」と思った方、こちらを読んでください。

さて、本日はコラム2回目なんですが、前回は熱を込めて趣味から強引に話を繋げましたが、今回も釣りを絡めて前回テーマの「学ぶとは」を引きずりながら述べたい・・・と思っていたのですが、ワールドカップの余韻があるうちに、そっち絡みで書くことにしました。

いやあ、今回のワールドカップはサッカー好きな人でなくても決勝戦には感動したのではないでしょうか。PK戦が多かった今大会でも、アルゼンチン対フランスの決勝戦には本当に「最後まで分からないのがサッカー」と感じた人が多かったことでしょう。私は人事時代に、社内でサッカーを用いて方針を話すことが多かったのですが、今回の森保監督の人材マネジメントと根性(スタイル)には凄く共感しました。

 



このコラムが掲載されるであろう1月中旬は、3月決算の企業であれば次期予算案の策定大詰めのことだと思います。人事部門の場合、よくある?経営からのミッションは

「採用費を抑えろ」


「人件費を削れ」


「労働対効果を高めよ(残業を減らす)」


などが挙げられます。自社の売り上げ状況を鑑みて、どこまで投資すべきかは、悩ましいところでしょう。私の事例で恐縮ですが、人事部門長時代に与えられた難易度高のミッションは

「経営管理部、営業部に代わって人事部門長として売上(&利益)を10%伸ばす戦略・戦術を立てろ」


(え?何で営業部門長でもない私が?)

でした。その時の自分のコンピテンシーが森保監督のスタイルと似ていたのではないかなあ、ということで人事の皆様のちょっとした参考になればと述べたいと思います。

今からちょうど10年前の話です。社員約500名の小売業でミッション拝命時は売上高約80億円、当期利益約6億円の状態。内部留保は過去3年で減りまくり、剰余金も5億円程度でした。

まず、私の着任までの経理管理部や営業部が取っていた作戦は

「店舗を増やして売上・利益を増やす」

という正攻法で、1店舗当たり3000万~1億円の出店投資を行い、3年間でブレイクイーブン、4年目以降の利益創出を目指すというもの。当然スタッフの新規採用も行います。ところが、2年が経過し、どう考えても3年目でのブレイクイーブンなんて新規出店した店舗の半数もいかないんじゃないか? の状態で見切られ、お鉢が回ってきた訳です。

どこに投資することが社員の為になるのか


私が人事部門長に着任して1か月、初めて全店店長会100人の前で宣言したのは

「これから3年で最前線の現場で働く社員が日々、幸せな状態の会社にする」


でした。その当時はウェルビーイングなんて意識もしていませんでしたが、単純に

「みんな売り上げも減って、毎日叱咤されて暗い顔している人も多いし、明るくいかなきゃね」という極めてシンプルな目標を掲げよう、という素直な気持ちでした。

後で耳にしたのですが、多くの店長がこの言葉で「あ、今度の人事部長は何か違うぞ」と感じてくれたそうです。私が宣言した時の200個の目の食いつきは今でも記憶に残っています。

(ちなみにそれまでの人事部門長はだいたい1~2年でお役御免かメンタル不調になり辞めていました)

それから3か月後の7月に冒頭の「来期(4月期首)は人事部門長のお前が全社計画を立て、営業部を人事部の傘下にする組織を組め」の内示が出るわけです。まあこれは社長のウェルビーイング経営?の先見の明かもしれませんし

「お前、幸せにするって言ったんだよな、じゃあやってみろよ」


の試金石でもあったのでしょう。流石に最初はビビったのですが、胃が痛くなりながらも、釣りをしながら考えました。

売上高人件費率は約25%=20億円強。

単純な私は「幸せ=美味しいもの食べる、誰かと旅行に行くとか」という物欲や精神欲を連想し

「その為にはお金要るよね→給料上げなきゃ」で、総人件費を3%アップさせてほしい(ベア分は別)=約6000万円ちょうだい、を提案しました。

そのお金をインセンティブ評価=定期賞与とは別に決算賞与として先に確保し、

店舗スタッフ約400名のうちの20%=80名にS/A評価をする算段を組み、

上位20%にあたる80名は年収が10%~20%上がる評価制度を発表しました


(評価制度への社員の見方が厳しくなるので、人事部門のスキルも上がる期待込み)。

そう、人事の皆さんなら直ぐにお気づきの

「262の法則」


を使ったのです。私は本当に単純なので

「社員の2割が変われば(ハイパフォーマーなら)会社は変わる」


と思っていました。そして中間層の6割は更に高みに引っ張られていき、モチベーションは上がるはず、と。

幸福感は次の幸せや利他の気持ちを生む


色々ありましたが、施策初年度の結果は売上高6億増(約7%増)、当期純利益は出店攻勢を控えたこともあり、1億増(約15%増)となり、売上は10%増になりませんでしたが、まずまずの成果を出せました。

そして、勝つ=高評価される、を経験すると不思議なもので皆、自然と「さあ、次いくよ」となります。

人事に対する社員の期待も高まってきますが、次のステップは

「休暇を充実させること」


にしました。当時はなかなか長期休暇が取れず、海外旅行にも行けなかった小売業ですが、次年度の人事施策は「新たに5連休を付与するので旅に行くこと」「その休暇の楽しさを皆にシェアすること」が基本の休暇制度を導入しました。

お金&休み。この神器を手にすると、心に余裕も出来るので、自分だけじゃなく、周りのスタッフにも幸せになってほしい、と思うようになります(元々、小売業はホスピタリティが高い人が多いこともあり)。

そんな利他の気持ちは、当たり前ですがお客様にも伝わります。そう、ここで好循環が生まれ、また売上は上がっていく、と。

 

まあ綺麗ごとだけじゃなく、マイナス評価の定義づけや、当然ながら経費削減もやりましたし、無駄なものは省いていきました。

でも、売上(利益)が落ちたから経費を減らすのと、売上(利益)を上げていくために経費を減らすのは同じようで全く違います。そして、お金や休みだけじゃなく、私自身もひとりひとりの店長を信頼、尊敬し、必ず全国の店舗に行って思いを直接伝えましたし、店長会の後は100人で「末広がりの5本締め」をして、心を一つにするアクションも取り入れました。これらは、管理部門的発想ではなく、攻撃的な人事施策のスタイルだと思うのです。

一旦好循環に入ると、後は自然と風が吹きますので、結果的にその後、自分の任期の5年間はプラス成長し続け、利益剰余金も5億円から30億円を超えるまでになりました(まあこれは良いこととは言い切れないけど)。

最初に約束した「3年間で店舗スタッフが日々幸せを感じる状態にする」に関しても、15社ほどあったグループ企業内のサーベイで社員満足度が15社中、着任前は下から3番目だったものが、上から2番目に。

人事は会社を変えられる。だから闘志を持ち、人への尊敬を忘れず。


「人事部門の責任者が営業部門を統括できるのかよ」「どうせ失敗してFIREだろうね」と冷めた目で見ていた人もいたと思いますが、とにかく「社員の可能性を信じて」「自分の評価など捨てたアグレッシブ思考」で、なんとかミッションを果たすことができました。

森保監督も結果を出すまでは

「アイツで大丈夫か?」


の交代論も出たりしたそうですが、選手を信じ、自分を信じた選手交代などで、あんなに優しい雰囲気ですが攻撃的な作戦で素晴らしい結果を出しました。当たり前ですが、常にクビも覚悟して臨んでいたでしょう。

人事部門は社員を管理統制する部門ではないと思います。社員を信じ、人事部門がリスクを取って勝負していくことをすれば、絶対に企業としての結果を出すことが出来る部門です。色んなしがらみや、思い通りに進まないこともあるでしょうが、既存社員の関連費、これから入社してくる人財の為の採用予算策定、ぜひ勝負してみてください!

人事は経営の核であるのは間違いありません。


 

 

 
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