釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第06話> 「さとうやすこ先生 」   2004/12/13  
 
小学校2年生のころの僕は、それまでの「いじめられっ子」から脱却しつつあ
りました。

そのきっかけを作ったのは第4話でも書いた「れい子ちゃん」でした。れい子
ちゃんからもらった大きな「勇気」のおかげで、僕は小学校に元気に通えるよ
うになっていました。

そしてもうひとり。忘れられない恩人が、きょう紹介する5つめの素敵な出会
い。「さとうやすこ先生」なのです。

小学校2年生になったばかりの、ある日の算数の授業の時のこと。

先生は黒板に計算問題を書いて、「できる人!」と、生徒を見渡しました。

僕は少しおどおどしながら手を挙げました。他にも何人か手を挙げていたはず
ですが、先生があててくれたのは、この僕。

僕は、教壇に登って、黒板の問題に取り組みます。取り組むといっても、たか
だか小学校2年生の問題。たいして難しい問題ではなかったのだと思いますが、
それでも僕にとっては、ドキドキとした長い時間でした。

解き終わって、僕は黒板に答えを書きます。

かなり自信があったのでしょう。僕は教壇から生徒の方を振り向いて、大きな
声で「これで、よいですか!?」と聞いたのです。

「これでよいですか?」と聞くことを先生から特に教えられていたわけでも、
強制されていたわけでもなかったと思うのですが、なぜか、そうしなきゃ、と
思ったのでした。

「よいと思います!」。何人かの生徒からの言葉が返ってきました。

やす子先生のほうを見ると、先生は満面に笑みを浮かべて、

「釘崎くん。すごいなぁー。答えがあっているのもそうやけど、堂々とみんな
の前で、『これでよいですか』って聞けるんがすごいと思うんよ」

そう言ってくれたのでした。そして、僕のあたまを何回も何回も力強く、でも
とても優しく撫でてくれたのでした。この時の感動を、僕はずーっと覚えてい
ます。

僕は、それから一年間、やす子先生から何度も何度もあたまを撫でられながら、
そのたびに「自信」という力を育んでもらいました。

さとうやす子先生からいただいたものの大きさ。今ごろになって気がついたよ
うな気がします。
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