釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第34話> 「ゼミの先生は、脱サラ助教授 (前編) 」   2005/07/19  
 
僕は生まれつき(?)勉強が苦手である。人からモノを教えてもらうというこ
とが性に合わないのか、単にアタマが悪いのか、飽きっぽいのか……。まぁ、
全部だとは思うが、コツコツと机に向かって勉強をするという行為が、どうも
苦手だった。

そんな僕なのだが、大学2年生の後期に、ゼミに入るための試験を受けた。僕
が通っていた大学は、全員が入れるだけのゼミがない。国立大学ではそんなこ
とはないのだろうが、私立大学の多くは、学生の数に見合うだけの先生が不足
していた。

だからゼミに入らなくても、卒論を書かなくても、卒業できる。勉強嫌いの僕
にとってはうってつけの環境だ。

しかし、何を思ったか、僕はゼミに入る選択肢を取った。せっかく大学に入っ
たんだから、同じ授業料を払ってるんだから、と損得勘定で考えたのかもしれ
ない。単なる見栄だったのかもしれない。

ともあれ、ゼミに入ろうと思った僕は、どのゼミに入るべきか、それぞれのゼ
ミの研究内容を比較検討し始めた。先輩たちにも聞いてまわった。

その結果、僕が選んだゼミは、「マーケティング」のゼミだった。マーケティ
ングという言葉が世の中に出始めたころで、学生の間でも人気が高まっていた
ゼミだった。なぜ選んだかといえば、いちばん学問らしくない学問で、実際の
企業のケーススタディを中心に行うらしい、と聞いていたからだ。

1学年の定員が10名。それに対して希望者は30名ほどいたと思う。ゼミに
入るための試験は、作文と面接だった。作文の内容はほとんど忘れてしまった
が、専門的な内容ではなかったように記憶している。

印象的だったのは面接。面接官は一学年上の先輩。当時大学3年生のゼミ生が
3~4名だけ。肝心の先生はその場にはいなかった。なんとこのゼミの先生は、
大事な選考を学生に任せていたのだ。

一浪して大学に入っていた僕は、面接官をやっている先輩たちとは実は同い年。
勉強が嫌いで成績も大してよくないくせにプライドだけ高い僕は、先輩たちの
面接に対して随分と生意気な受け答えをしたような気がする。
「こりゃダメだったかな…」と、ほとんど諦めていたのだが、その数日後、掲
示板に「合格者」として張り出されていた。何が評価されたのかはわからない
が、すごく嬉しかった。生意気も悪くないもんだ、と勘違いをしたものだ。

ゼミに入ってびっくりしたことがある。それは先生の経歴だ。当時先生は36
歳。数年前に大学に来たばかりだという。その前までは、民間企業でサラリー
マンをやっていた。当時としては珍しい、脱サラ先生だったのだ。先生の名前
は上原征彦(うえはらゆきひこ)助教授(当時)といった。

(アカデミックにつづく)

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