釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第60話> 「エンジニアという仕事」   2006/02/06  
 
僕は23歳で、SEというかプログラマーというか、要はコンピュータのソフ トウェア開発に携わることになった。

コンピュータに携わるなんて、まったく考えたこともなかった道だ。もちろん、 コンピュータが好きだったわけではない。行きがかり上、引き返すことの出来 ない職業選択だった。

僕がやっていた仕事は、大手メーカーの下請けの仕事。特に計測器や制御機器 を作っているメーカーの仕事がほとんどだった。

僕が担当していたメーカーは3社ほどあった。いずれも上場企業。世間でも高 い技術力で定評のある一流の会社ばかりだった。

そのメーカーのエンジニアたちが僕の仕事のお相手だ。一流企業のエンジニア って、当然のことながら、皆アタマがいい。文系出身の僕などは、感心させら れることばかりだった。

僕は、SEという立場で、エンジニアたちと仕事の打ち合わせを行うわけだが、 僕が素人だっていうことは、エンジニアたちにはすぐ見抜かれていた。でもこ のエンジニアたちがすごいのは、僕が素人だってわかっても、決して見下した りせず、仕事が完成する(ソフトウェアを組み込んだ装置ができあがる)まで、 僕のことを大切なパートナーとして扱ってくれた。

納期が迫っているときなどは、いっしょに一週間連続で工場に寝泊りするなん ていうこともあった。お互い無精ひげをさすりながら『なかなか思うように動 かないですねぇ』とコンピュータの画面を一日中覗き込んだりしていたことも あった。うまく動いたときなどは抱き合って喜んだものだ。

僕は5年ほどソフトウェア開発の仕事に携わっていたのだが、この間、特に親 しくさせてもらっていたエンジニアは10名ほどいた。この10名に共通して いたのは、皆とても純粋だったということ。仕事には妥協を許さず、とても厳 しかったということ。そして、ひとたび仕事から離れると、とても人間的で優 しかったということだ。

エンジニアっていうと、とかく頭でっかちで、融通が利かなくて、冷静・冷酷 なイメージがあるかもしれないが、それは大間違い。これほど人間味あふれる 人たちはいない。接していて、とても気持ちが良くて心が洗われる。だから過 酷な仕事であっても、一緒に長時間やれたりするわけだ。

それまで僕がリクルートで経験していた、勢いのある『イケイケドンドン』的 な仕事とはまったく異質のエンジニアの仕事。僕の性格に合っていたかどうか は甚だ疑問ではあるが、でも、20代の若いうちに体験できたことは、僕にとっ て極めて貴重なことだった。

ということで、今回の出会いは、僕が20代の頃出会ったエンジニアとエンジニ アの仕事。38番目の出会いでした。
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