時代はすでに1990年。
リクルートでの売れない営業マンを皮切りに、ベンチャー企業での人事担当者、
コンピュータ音痴・経験ゼロの偽SE、大手コンピュータメーカーでの販売推
進プロジェクト担当…。
さまざまな職を渡り歩いてきた釘崎青年も、ついに30歳を迎える年になって
いました。
30歳に到達するまでの猶予期間があと半年ほどとなった、1990年の4月。
それまで自分が歩んできた道を振り返り、そして、今の自分を見つめ、
「いったいオレはこの先、どう生きていきたいんだろう…」
と自問自答することが、やけに多くなっていました。
なぜか?
直前の1年間は、大手コンピュータメーカーF社の特別プロジェクトで、全国
を飛び回りながら多忙ながらも充実した時を過ごしていたものの、そのプロジ
ェクトが3月で解散。ボクはもともとの転職先であった系列のディーラーM社
に席を移していました。
M社の職場の環境は、それまでのF社の環境とは全然違っており、なんという
か、ど~んよりとした澱んだ空気が事務所の隅から隅まで漂っていたんですね。
周囲から聞こえてくるのは、自分の会社や上司・経営者への悪口、F社への愚
痴、取引先の悪口、そしてため息ばかり…。
「な・なんなんだー、この会社は!…」
考えてみれば1年前、このM社に転職をしたものの、実際に働いていた場所は
メーカーであるF社。
1年後のこの時、なんだかまたあらためて別の会社に転職してきたという感覚
に近いモノがあったのです。
はっきり言って、このM社、若手社員、中堅社員、課長職、部長職に至るまで
「覇気」というものが全然感じられず、ただ、大手メーカーF社の庇護の元、
既定の仕事をご用聞きよろしくこなしているだけのように、当時のボクには見
えてしまったのでした(これは多分にボクの主観が混じっていますが)。
こりゃいかん、この会社なんとか変えなきゃ!と思いつつも、
『朱に交われば赤くなる』で、だんだん自分の気持ちも萎えて腐りはじめてき
たことに気づき、
「オレはいったい何のために1年前S社を裏切る謔、に辞めてきたんだー!」
「オレは、この会社で、自分の自分らしい道を見つけられるのかー???」
「おい、クギサキ、お前はもうすぐ30歳だぞ!どうするんだ!?」
と自分を追い込むようなことばかり考えるようになってしまったわけなのです。
そして、
「と、とにかく、この場所を離れなきゃ!自分がおかしくなっちまう!」
と、その後のあてなどなにもないにもかかわらず、半ば衝動的に、辞表を会社
に提出してしまったのでありました。
(そんな!随分と短絡思考じゃない?…つづく)
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