1997年10月8日、午後7:15。
銀座8丁目にあるリクルート本社の受付ロビーで、ボクはその男を待っていま
した。
その昔、分厚いリクルートブックの見本誌を両脇に抱え、
「クギサキさー、オレたちなんでこんなに売れないんだろう…」
とぼやきながら神田の街を一緒にトボトボと歩いた、その男…。
「おー、クギサキー、わりーわりー、遅くなっちゃった。おー久しぶりー」
当時とまったく変わっていないその男は、約束の時間に遅れたことなど少しも
気にすることもなく、屈託のない笑顔でクギサキくんの前に現れました。
その男、名前を「ムライミツル」と言います。
売れない営業マンだったはずのムライさんは、本人のキャラクターとは全然似
合っていない、人事部に所属しているという。
「そうだ、クギサキ、昔よく行った、『やぐら茶屋』に行こうぜ!」
昔、リクルート本社で会議があると、帰りにはよくこの『やぐら茶屋』に立ち
寄って飲んだものでした。
「いやー、ムライさん、久しぶりですねー」
久々に再会した2人は、かなりの急ピッチで飲み始めていました。
「ムライさん、俺さー、今の仕事十分面白いんだけど、こう…なんか
満たされないんだよね…」
「機会さえあれば、会社でもつくって、自分の好きなように仕事をやって
みたいなー…」
そう愚痴るボクに対してムライさんは、実に簡単に次の一言を発したのでし
た。
「なんだ、クギサキ。じゃー、おまえ会社作れよ!」
いとも簡単にそう言われたボクは、相当に心が動揺してしまったのでした。
(ん?今日は短いね。…つづく)
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