3週間無料掲載、4週間目からは有料掲載。
掲載料は、1社3万円または6万円。掲載期間は約1ヶ月単位。
1998年3月3日に、パフが初めて運営を始めた就職情報サイト「しゅうかん会社説明会」の掲載料金の制度はこうだった。
そして、3月上旬時点での掲載申し込みは、なんと80社ほどに達していた。
しかも8割以上の企業が6万円(有料掲載だとすれば)の申し込みだった。
もし、全社が4週目以降も掲載を継続してくれたとしたら、400万円以上の売上げになる計算だ。
当時の1ヶ月の会社運営コストが約200万円……。つまり、200万円の単月黒字が出るという、創業したばかりの会社としては驚異的な業績が目の前にぶらさがっていた。
3月20日過ぎ。
掲載申し込みをしている約80社の企業に対して、FAXとメールを使って一斉に「有料での掲載継続のお願いとその意思確認」のレターを入れることにした。
「間もなく無料掲載期間が終了します。
もし、効果がみられずに掲載を中断される場合には、FAXにて掲載中断の
ご連絡をお願いします。
ご連絡がない場合は、そのまま掲載を継続させていただきます」
という感じのレターだった。
「神様!全社継続とは言いません。せめて半分の企業に、どうか有料で継続し
てもらえますように……」
まさに切なる願い。神頼み状態だった。
そんな願いもむなしく、翌日から、FAXの「ピー音」が社内に鳴り響いていた。
「残念ながら、無料期間のみで掲載を打ち切ります」
すべてのFAXが、この内容だった。
(打ち切りの場合だけ、FAX連絡なので当然だが……)
FAXのフォーマットには、あらじめ、掲載打ち切りの理由を書いてもらう枠を設けていた。せめて心理的に、掲載を打ち切りにくくするためだ。
しかし、大半のFAXは、そこの部分は空白。次に多かったのが「期待したほどの効果が得られなかったから……」という理由が書いてあった。
「うそつけ!」
そう怒鳴りたい気分だった。
就職メディアは、「学生からのエントリー」という直接の効果があって初めて成り立つメディアである。
特にこのときのメディアは「会社説明会への申し込み」という明らかに目に見えるもので効果が判断される。
そんなことは百も承知であるボクは、効果を出すために、あらゆる手段を講じていた。学生のネットワークやDM、人海戦術、それからあまり人には言えない裏技をも駆使して、掲載企業のほとんどのところに、パフからの説明会の申し込みが得られるように対策していた。
なのに……である。
もっと頭にくる掲載中止の理由があった。
「最初から無料掲載で終了させるつもりで申し込みました」
正直といえば正直だが、あまりに人をバカにしている。
結局、掲載中止のFAXは、全体の半数以上を数えてしまった。
「ま、しょうがない。それでも半分近くは残ったわけだから、なんとか単月の
赤字は小額で済みそうだ。会社倒産も少なくとも1ヶ月はなさそうだ……」
しかし、本当の悪夢はさらにその1週間後に襲ってきたのであった。
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