2000年1月中旬。
正月早々やらかした『ぎっくり背中』も、ようやく痛みがひいてきて、何と
か普通の生活と仕事ができるようになってきた。
会社を立ち上げてから丸2年。
1年目は大赤字。2年目も、売上げは50%近く増えたものの、相変わらず
の赤字だった。
パフは、小さいながらも「パフの就職応援ページ」というサイトを運営し
ているので、システム投資を含む運営コストや、学生に知らせるための広告
宣伝費で、多額な費用がかかってしまうのだ。
多額の出費があるにもかかわらず、営業力は極めて乏しい(実質の営業マン
はボクしかいなかった)。
「このまんまじゃ、パフは釘崎個人商店をいつまでたっても脱出できない。
それどころか、『座して死を待つ』だけだ。どこかで弾みをつけなきゃ。
そのためには、本格的に正社員を採用して、自分以外の戦力を蓄えていかな
ければ…」
前の年までは、営業スタッフとしてインターンシップ学生に営業活動を行っ
てもらったが、結果は惨憺たるもの。
そもそも結果責任を負わないインターンシップの学生に、大事な採用の仕事
を預けようとは、会社側だって思わない。
そういうことは分かりつつも、資金的余裕がなかったため安く働いてくれる
インターンシップ学生に頼らざるを得なかったのだ。
しかし!そんなことを言っていたら、前には進めない。
「よし。今年は社員を採用しよう。しかも新卒採用だ!」
が!そこには大きな問題があった。
それは資金と事務所…。
お金はもちろんなかった。
いや、自分だけなら、なんとか食べていけるくらいのお金はあった。
また、夏場になれば、ある程度の売上げが上がる見込みもあった。
しかし、即戦力にならない新卒を雇用して、給料を払っていくだけの蓄えは、
まったくなかった。
そして入れ物である事務所。
当時のパフ事務所は、とてもじゃないが、新卒者が入りたいと思うような事
務所ではなかった。「これが会社の建物?」と思われてしまいかねない、狭
くて古ーいオンボロビルの一室にあったのだ。
「うーん。悩んでいても始まらない。まずは引越しだ。もろもろの資金は、
なんとか捻出しよう。なせばなるだ!」
自分の給料すらまともにもらっていなかった、この2年間。
ボク自身に資金などあるはずもなかったのだが……。
ちょうどそんな折、ある悪魔が、ボクに忍び寄ってきたのだった。
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