前回にひきつづき2000年1月中旬~下旬。
飛び込みで、パフへの出資を申し出てきたSI社とボクとの会話。
■ボク : 「ベンチャーキャピタルが飛び込みとは珍しいですねー?」
●S I : 「はい、まさに今の世の中は、スピードと機動力ですから。有望な企
業を見つけたら、一秒でも早く駆けつけるのが私どものモットーです」
■ボク : 「はぁ、そうですか……。ところで、どうしてうちの会社に来たんで
すか?出資対象となるような会社じゃないですよ。他のベンチャー
キャピタルもよく来てましたが、2度以上は来ないですしね(苦笑)」
●S I : 「いや、そんなことはないです。我々が独自に調査した結果、御社は、
十分な出資対象です。1000万円はすぐにでもご用意させていただき
ます」
■ボク : 「ほぉー」
●S I : 「来週にでも、うちの社長に会ってもらいたいのですが、そこでうま
くいけば、即決で1000万円~3000万円の出資を決定します」
どう考えてもおかしい。
パフが成長著しい事業内容で、売上げもグングン伸ばしているのなら、まだ
話はわかる。
しかし、当時のパフの売上げは、地を這うような数字だったし、利益などは
地を這うどころか、地中奥深く潜り込んでいたのだ。
いかに世の中「ネットバブル」とはいえ、そんなパフにいきなり3000万円の
出資を即決で行うとは、どう考えても普通ではない。
■ボク : 「3000万円出していただくのはありがたいんですが、何か条件でもあ
るんですか?」
●S I : 「いや、そんなものはありません。まぁ強いて言えば、出資を受けて
いただいた後は、私どもが用意する経営サポートを利用していただ
くくらいでしょうか」
■ボク : 「経営サポート?なんですか、そりゃ」
●S I : 「はい。税理士、会計士、弁護士で構成される組織で、投資先へのサ
ポート業務を行っているんです」
■ボク : 「いや、うちには税理士も会計士も、すでに頼んでいる人がいますか
ら必要ありません。弁護士も知り合いがいるし…」
●S I : 「その人たちとの契約は、解約してもらうことになります」
■ボク : 「え!?」
●S I : 「ルールですから」
■ボク : 「いくらかかるんですか?その経営サポートとやらは?」
●S I : 「はい。年会制になっていまして、1000万円/年です」
■ボク : 「なにー!?1000万円??」
●S I : 「月々わずか100万円弱ですよ」
■ボク : 「いまは税理士、会計士費用は、毎月5万円程度です。20分の1で
済んでいます。そちらに切り替える必要など、まったくない」
●S I : 「そうすると出資もできませんよ」
なんて横暴なヤツだ。ボクは、だんだんアタマにきていた。
■ボク : 「出資を受けたとしても、1000万円もって行かれたんじゃ、何の意味
もないでしょ?しかも1年で1000万円ということは、3年で3000万
円。しかもオタクは、大株主になるわけですから、経営にいつでも
口出しできるわけでしょ?いったいウチに、どんなメリットがあるっ
ていうんですか!?」
●S I : 「メリットはありますよ。うちの親会社SI社から出資された企業と
して、企業イメージが格段にあがります。取引先にも安心されます
よ」
■ボク : 「……」
あきれてものが言えない、とはこのことだ。
今にして思えば、ネットバブルを演出したSI社ならではの物言いだ。
勘違いはなはだしい。
■ボク : 「ウチは出資していただかなくとも結構です。
どうぞお引取りください」
●S I : 「え?本当にいいんですか?今断れば、もう2度とSI社からの出資
を受けることはできませんよ」
■ボク : 「結構です。どうぞ帰ってください」
とっとと帰りやがれ!このスットコドッコイ!と言いたかったくらいだ。
あとで分かったことだが、このSI社、同様のトークで、目ぼしいベンチャ
ー企業、手当たり次第に声をかけまくっていたらしい。
まったく油断もスキもあったもんじゃない。目先の金にだまされるところだ
った。
しかし、一難去ってまた一難。
また別の悪魔が、ボクのもとに忍び寄ろうとしていたのだった。
|