2000年6月6日。
引越しが無事終了し、広くなったパフの事務所で、ボクは「会社説明会」に
訪れるであろう学生達を待っていた。
思えば仕事始めの日に、
「このまんまじゃ、パフは釘崎個人商店をいつまでたっても脱出できない。
それどころか、『座して死を待つ』だけだ。どこかで弾みをつけなきゃ。
そのためには、本格的に正社員を採用して、自分以外の戦力を蓄えていかな
ければ…」
と一大決心をした「パフはじめての新卒採用」。
お金もないくせに、新卒採用のために引越しをして事務所を広くした。
なんとかパフを一緒に立ち上げていってくれる仲間を募りたいと思っていた。
しかし、日々の資金繰りにも窮していたパフ。
売上げがあがらなければ即刻倒産する運命を背負った超零細企業である。
普通の会社に応募する感覚でパフに来てもらっても、ミスマッチとなってし
まうのは、「火を見るよりも明らか」である。
そこで、パフの募集要項のページには、パフの厳しい現実や、パフで働くに
は相当な覚悟が必要であることを、口を酸っぱくするほど書いた。
また、安易な気持ちで説明会に参加しないように、「特製の応募書類」の
持参を義務付けた。
その「特製の応募書類」とは、尋常ではないほどたくさんのことを書かなけ
ればならない代物だった。
市販のレポート用紙に、指定された10数項目の質問への回答を記述する
形式で、ギッシリ詰めて書いたとしても3枚以上になるほどのボリュームだ。
(実際、10枚以上書いてきたツワモノもいたくらいだ)
写真は、「普段の表情がわかる『スナップ写真』を貼ること」という指示を
した。
さらに、応募書類とは別に「パフでやりたいビジネスの『事業計画書』を
書いてきなさい」という課題も出していた。
まだあった。
「内定後、週3日以上、内定者研修として働くことの出来る者」
という駄目押しとも言うべき「応募資格」まで付けたのだ。
…よくもまぁ、ここまで応募者に負担を強いたものだ。
どう考えても「説明会に来るな!応募するな!」と言っているようなものだ。
でも、このくらいのハードルを乗り越えて応募してくれる学生でなければ、
パフでの仕事は務まらないと思った。
説明会への参加申し込みは、パフが開発した商品でもある「説明会受付シス
テム」を使って受付けた。自分で言うのもなんだが、なかなか優れもののシ
ステムだ。
今では当たり前になった「ネット予約」のシステムだが、使いやすさ・分か
りやすさ・機能性においては、リクナビの同様のシステムにも負けていなかっ
たと思う。
その「説明会受付システム」を使っての申し込み受付。
なんと数日間で、用意したすべての回は満席状態になってしまった。
これにはボクも驚いた。
「あれだけのハードルを課したのに、みんなよく申し込んでくれたものだ。
パフって人気あるんだなぁ……。ヘヘヘ」
ボクは、ちょっとした満足感に浸っていた。
少なくとも、会社説明会の開始時刻が来るまでは……。
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