2000年8月7日(月)。
実家(岩手)でのお葬式のため、内定者研修に参加できなかったササキタカ
ノリ(以降タカノリ)が、パフに出社してきた。
これで、4名の内定者が全員揃ったことになる。
男性2名、女性2名の、ちょうどいいバランス構成である。
ヨシカワとフルカワ。この2名が女性である。
ヨシカワは、東京出身。フルカワは、大阪出身。
2人とも、どしっと安定感のある体格だ。
タカノリとアサヒ。この2名が男性である。
女性陣と比べて、ちょっと弱々しい体つきだ。
実は2人とも、苗字は同じ、「佐々木」という。
紛らわしいので、社内では、下の名前で2人を呼ぶことにした。
…実は、2003年8月現在、上の4名のうち、2名はパフにいない。
フルカワとアサヒである。
フルカワは今、大阪の大学院に通っている。アサヒは、CD/レコードの流
通・小売の会社で働いている。ここらへんの経緯は、今後の物語の展開の中
で、触れることになるだろう。…が、それはまだまだ先の話。
話を元に戻す。
正直に言うと、タカノリが、この日ちゃんと出社するかどうか心配していた。
選考辞退をするための口実として、「実家のお葬式」というのは、学生の間
では定番の理由である。
内定をもらったのはいいものの、研修が始まる直前になって不安になり、
おもわず「実家のお葬式」を理由にして、参加しなかったのではないか?
そんなことを不謹慎ながら、多少は思っていた。
が、週が明けたこの日、タカノリは何事もなかったかのように出社してきた。
ボクの杞憂というやつである。
もっとも、今のタカノリを知る人ならば、そんな器用なウソのつける奴では
ないことなど、すぐにわかるのだが。
さて、そのタカノリ。出社してきたのは一安心なのだが、彼だけが、内定者
研修を受けていない。
ところが、ぱっと見、一番研修が必要に思えるのはタカノリなのであった。
およそ若者らしくないヨレヨレのスーツとネクタイとワイシャツの着こなし。
顔の下2分の1に生え渡る、青々とした髭。
どう聞いても、違和感を覚えてしまう、不自然な応援団系の敬語。
前に15°傾きながらの猫背歩き。
外見、態度、言葉遣い。どれをとってみても、まともなものがひとつもない。
しかし、再度、彼だけのために研修を実施するだけの時間がない。
ボクは、この当時、現場の営業マンを兼ねていたので、日中はびっしりと客
先訪問が埋まっていたのだ。
そこで、タカノリの教育係に、ヨシカワとフルカワの女性陣2名を任命した。
数日前に行われた「寺さん研修」で教わってきたことを、タカノリに、その
まま伝え、指導するように指示した。
ヨシカワとフルカワは、「わが意を得たり」とばかりに、タカノリに対して
付け焼刃の新人教育を、得意満面に行った。
今から思えば、これが、タカノリのパフ人生のスタートということになる。
その後、彼がパフで辿る運命を示唆していたのかもしれない。
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