2000年10月18日(金)夕方。
ボクは明治学院大学で、就職講座を行っていた。
この日の就職講座は、4社の協賛企業に協力をお願いして、パネルディスカ
ッション形式で進行していた。
内定者のヨシカワ、アサヒ、タカノリの3名も、
勉強のために連れてきていた。
講座は、夕方4時半から始まり、6時半までだったのだが、ヨシカワだけは、
少し早めに引き上げていった。
ヨシカワは、夜7時から、ある会社に営業訪問のアポイントが入っていた
のだ。江東区に本社のある、NA社という外資系の大手メーカーだ。
ヨシカワは、この2週間ほど前に、1回目のアポを取り付けて、営業訪問し
ていた。
ヨシカワからは、「いい感じです」という報告を聞いてはいたものの、
それほどすぐに受注できる会社ではないだろうと、ボクは思っていた。
内定者の営業活動は苦戦が続いており、1ヶ月前にフルカワが受注したSS
社以外には、ホントの意味での新規受注は1件もなかった。
すでに内定者研修が始まり2ヶ月以上が経過していた。この頃のヨシカワも、
相当に焦っていたことだろう。
「じゃ、クギサキさん。今夜はNA社に訪問したら、もう遅くなると思いま
すから直帰します」
ヨシカワは、そういってNA社に訪問していた。
一方、ボクは、明学での就職講座が終了した後、パネルディスカッションの
パネリストをやってくれた、NM社のHさんと、赤坂見附の居酒屋で一杯飲
んでいた。
#内定者が、懸命に営業活動をやっている最中に、ノー天気にお酒を飲みに
#行くとは、なんと呆れた社長だろう。
夜8時半を回った頃だったろうか。ボクの携帯電話がブルブル鳴った。
「はい、クギサキです。あれ?ヨシカワ??どうしたの?」
電話の主は、ヨシカワだった。
「は、は、は、はい。クギサキさん。や、や、や、やったんです!」
「え?何がやったの?」
「と、とれたんです~!」
「ん?」
「NA社、パフの協賛企業になってくださるそうですぅぅぅ!!!!」
ボクは一瞬、何のことだかよく分からなかった。NA社は、ボクのヨミの
中では、ぜんぜん見込み客として浮上していなかった会社だったからだ。
少しして状況が飲み込めてきた。
「お、おおおおおおぅ!!!良かったなー!今どこだ?」
「は、はい、今駅に向かって走っているところです。
クギサキさん、私、やっぱり今夜これから事務所に戻ります」
「おう。じゃオレもこれからすぐに帰るよ。祝勝会やんなきゃな♪」
そうか…。ヨシカワも遂に受注したか。しかも今回の受注は、正真正銘、
内定者だけの力で取ったもの。そう考えると、ボクは極めて嬉しくなって
いた。
「Hさんも一緒に月島まで行きましょうよ!」
「え、いいんですか?じゃぁ喜んでご一緒しますよ♪」
赤坂で一緒に飲んでいたNM社のHさんも、無理やり誘ってしまった。
そして、30分後。
Hさんと一緒に月島に戻ると、歓喜に溢れたヨシカワがいた。
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