いじめっ子のFに怯えながら過ごす小学1年生の毎日。
それでも、なんとか1学期をやり過ごし、2学期もそろそろ終盤を迎えようと
していました。
僕の住んでいた湯布院は、九州とは思えないくらいとても寒いところ。特に僕
の小さな頃の湯布院は、「ここは北海道か?」と思えるくらいに、11月の後半
くらいから雪の降る日が珍しくありませんでした。
その事件の日も、湯布院の町にはたくさんの雪が降り積もっていました。
・・・・・・
学校からの帰り道。友達がいなかった僕は、ひとりぼっちで慣れない雪道をヨ
タヨタ歩いていました。
なんだか後ろに人の気配がするなぁ…と思ったその瞬間。
僕のうしろ襟がグイっと引っ張られ、冷たい雪が背中に流し込まれてきました。
「ギャーッ」と悲鳴をあげて振り返ると、そこにはニタニタと僕を見おろす、
いじめっ子のFとその子分たちの姿。皆、両手にたくさんの雪のかたまりを
持っていました。
そしてFの合図で、全員が僕をめがけてその雪を投げつけてきたのです。Fは
いちばん陰湿で、僕の襟首にさらにたくさんの雪を放り込もうとする。僕は、
恐いのと悔しいのと冷たいのと情けないのとでパニック状態。逃げ出すことも
出来ず、もうどうしたらいいか判らずにただただ泣き叫ぶだけ。
と、その時でした。
「こら、あんたたち何しよるんかい!やめんかい!!」という女の子の声。
その女の子は次の瞬間、僕を羽交い絞めにしていたFに飛びかかり、なんと自
分よりはるかに体の大きいFを引きずり倒してくれたのでした。そしてFやF
の子分たちに大声で一喝。
「あんたたち、こげなヒデー(酷い)こつ(事)して、何とも思わんのかい!
これから学校に戻って先生に言うちゃるけんね!!」
Fと子分たちは、その女の子にきつく睨みつけられ、すごすごと退散していっ
たのでした。
この女の子こそ、僕の素晴らしき出会いの3人目。僕の運命を変えた「れい子
ちゃん」なのでした。
後編に続く……。
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