釘さんの100の出会い プロフィール
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  <第22話> 「馬刺しと焼酎と迎え酒   2005/04/18  
 
大きな声ではいえないが、僕は高校生の頃からお酒の味を覚えていた。不良だ
った訳ではない。高校の3年間は下宿生活だったので、酒を飲むのがごく普通
の生活だったのだ。

しかし、酒が好きだから飲んでいたわけではなく、友達と酒を酌み交わしなが
ら語り合うのが好きだったのだ。

飲んでいたのは、もっぱらビールか安物のウイスキー。サントリーのREDを
コーラやオレンジジュースで割って飲んでいた。いま考えたらゾッとするよう
な飲み方だ。当然、あまり美味しいと思ったことはない。

僕が酒って美味しいなぁ……と、本当に思うようになったのは大学1年生の頃
からだ。そして、それは大学1年生の夏休みにバリエーションを広げるととも
に決定的なものとなった。

僕は大学1年の夏休みに、3日間ほど自分が生まれた母方の実家(熊本県八代
郡坂本村)に遊びに行った。母方の実家には、当時僕の従兄弟たちが住んでお
り、旅館(実態は民宿兼下宿屋)を営んでいた。

8歳ほど年上の従兄弟が、僕を歓迎してくれて、酒を振舞ってくれた。最初は
ビール。そして次に出てきたのは焼酎(さつま白波)だった。
つまみは、皿一杯に盛られた馬刺し。そう、馬の刺身だ。醤油とおろしニンニ
ク、おろしショウガをつけて食べる。

僕はこの時まで、馬刺しを食べたことがなかった。いや、子どもの頃、親父の
酒のつまみで、食卓に上がったことはあったのだが、その時は気持ち悪くて食
べることができなかったのだ。

が、このとき食べた馬刺しは格別。またビックリしたのは、焼酎との組み合わ
せが絶妙なことだ。なんともいえず旨い。

この日の夜は、従兄弟と下宿をしていた中学校の先生と3人で、深夜まで焼酎
を飲みながら語り明かし、一升瓶を全部空けてしまった。

さすがに翌朝は頭が痛く、胸も多少ムカムカしていた。

が、ビックリしたことに、従兄弟が、「おい、キヨヒデ(僕の名前)、迎え酒
やるぞ。コップ持って来い!」と起きてきたばかりの僕に、ビールを勧めてき
た。

「二日酔いには、迎え酒がいちばんたい!」と、従兄弟は言う。さすが熊本の
男。鍛え方が違う。僕はなかばヤケになって、勧められるままにビールを飲み
干した。

すると不思議なことに美味しい。なかなかイケル。痛かったアタマもすっきり
してきた。

この日から僕は、本当の意味での「のんべぇ」の道を歩き始めたのだろう。

馬刺しと焼酎と迎え酒。大人になるための通過儀礼的な出会いだったのかもし
れない。・・・ということで、20番目の出会いでありました。

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