僕は、会社を設立するにあたって、数多くの方々に出資を呼びかけて、株主になっていただいた。ポリシーがあってのことではない。そうせざるを得なかったのだ。
当時の法律(商法)では、株式会社を設立するためには資本金として1千万円が必要だったのだが、僕には、その10分の1の100万円しか手持ちのお金がなかった。
実は、この100万円さえも、カミさんが娘のために貯めていたものなので、実際のところは、僕にはお金がまったくなかったのだ。
会社を創ろうと決意した日の翌日から、僕は株主になっていただける人たちを探し回ることになる。A4サイズの紙に2ページ程度の、極々簡単な事業計画書を携えて、毎晩のように、知人・友人たちを訪ね歩いた。数週間で30人以上の人たちと会った。
久々に会う人たちも多かった。一晩で2人、3人と会う約束をし、ハシゴをすることもあった。
会う人会う人みんなに、「実は、会社を作りたいと思っています。ぜひ株主となって応援してください」と切り出した。
なんて図々しい奴だろう。普通に考えたらあり得ない話しだ。詐欺師みたいなものだ。いや、詐欺師のほうが、まだ遠慮があるかもしれない。
「株主となって応援してください」といえば聞こえはいいが、実際のところは「俺が会社作るって言ってるんだから、おまえ金をよこせ!」と言っているようなものだった。『盗っ人猛々しい』とは、このことかもしれない。
しかし、どうしたことだろう。こんな僕の図々しいお願いを、皆さん聞き届けてくださった。お願いをしたほとんどの方々が、株主となることを承知してくれたのだ。
なんてありがたいことだろう。文字通り「有り難い」ことだ。人のありがたみを、このときほど感じたことはない。
古くは中学時代の友人から、近くは当時の取引先の方々に至るまで。約30人の方々からの出資を得て、株式会社パフは設立されたのだ。
当時の株式は、1株5万円。1株だけの出資だとしても、個人にとってはとても大きな金額だ。事業を成功させて、何倍にもして返したいと思った。いや、それ以前に、株券を紙くずにしてしまってはならないと思った。
会社が出来て、今年で丸9年。当時5万円だった株が、いまはその数倍の価値となっている。まだ恩を返しきっているわけではないが、裏切ることなくここまで来れたことに、多少の安堵を感じている。
最近は、○○ファンドとか、俄か個人投資家の出現のせいで、株式投資がいかにも胡散臭いもののように受け止められる向きもある。
しかし、少なくとも創業時のパフに出資してくださった株主の皆さんは、心の温かい方々ばかりだ。会社の成長を願ってくださっている、本来の投資家の志を持っている方々ばかりだ。
「会社は誰のものか?」という議論が少し前に流行ったが、少なくともパフは、創業時の株主の皆さんの心有る出資がなければ設立し得なかった会社だ。
「あぁ、あのときパフに出資して株主になって、本当に良かった」。創業時の株主の皆さんに、こう心から思っていただけるような価値ある会社になっていきたいと強く思う。
ということで、52番目の出会いは、創業時の株主の皆さん。実際には30名近くいるのですが、「ひとり」として出会いに加えさせていただきました。
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