創業物語 プロフィール
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  第20話    「ボクの就職活動」 2000/12/10  
1983年8月下旬のある日。

「自分の就職を真面目に考えなければ…」と思ったボクは、大学の先生
から紹介してもらった、とある薬品メーカー(TVでCMをよくやっている風
邪薬やドリンク剤などの大衆薬を作っているところ)を訪問したのでした。

半年以上もの間、学生の身分をひた隠しにしてリクルートの営業にドップリ浸
かっていたボクにとって、いきなり学生に戻っての会社訪問は、相当に違和感
のあるものでした。

「人事の人を見たとたんに、ついついリクルートブックの営業しちゃったらど
  うしよう…。案外売れたりして…」

なーんて、馬鹿なことを考えたりしたものです。

さて、その会社(仮にA社としましょう)の受付に到着するやいなや、会議室
に通されました。そこにはボク以外に、なんと10名程度の学生がすでに着席
しているではありませんか!

「なんだ?今日は個別に話を聞かせてもらうはずではなかったのか…?」

と、思っていると、すぐさま人事課長のBさんが会議室に入ってきて、会社の
説明を朗々となさるではありませんか。

「なーんだ。今日は単なる会社説明会か…。それにしてもこの規模の会社
の割には参加学生は結構少ないんだな。なんだか頼りない顔つきばかりだけど、 大丈夫なのかな…」

そんな事を考えている内に人事課長の会社説明は終わり、さらに別室に通され
たのです。

何をやらされるのかなー?と思っていたら、その部屋には筆記試験の用紙がセ
ッティングされており、人事課長の説明では、「せっかく来ていただいたので、
試験を実施してしまいますねー。あしからずー」ということで、なんとこの
日は立派な選考会だったのですね(その割には人数が少ない)。

そして筆記試験の後にB課長がこっそりボクに耳打ち…。

「えーっとクギサキくん、ちょっとお話がありますのでこの場に残っておいて
  いただけますか?」と言われたのでした。

他の学生が全員帰った後、B課長は相好を崩して、

「○○先生(この会社を紹介してくれたボクの大学の先生)にはいつもお世話
  になってましてね。前々から優秀な学生さんがいたら紹介してください、と
  お願いしていたんですよ。」

実はこの日の説明会(兼選考会)は、一般枠ではなく、教授などから紹介され
た学生のみを集めた特別枠の説明会だったのです。その中でもボクは、さらに
特別待遇を施していただいたようで…。

「ということで、ぜひクギサキくんには、次回うちの役員に会ってもらいたい
  と思っているんですけど…。
  あ、それとね入社後の職種は、先生のゼミ生ということもあって販売促進、
  マーケティング関係を考えています。営業じゃありませんよ」

(俺、ゼミ生の中でも一番デキが悪い方なのに…なんだかB課長、勘違い
  しているようだなー。俺、営業ならまだ使えるかもしれんのに…)

ともあれ入社を大前提とした話が出来上がってしまっており、それはそれで悪
い気はまったくしなかったのですが、別にその会社に対して何の思い入れがあ
る訳でもなし、いきなり入社を前提とした話をされても正直戸惑うばかりでし
た。

「こんなんで就職決めちまって良いのだろうか…」

そう思ったボクは、1週間ほど時間をもらって考えさせてもらうことにしたの
です。

実は、この時ボクには、とても気になる会社が1社あり、A社の説明会で話を
聞いているあいだ中、その会社のことをずっと考えていたのでした。


                (お、おい早まるなよ…。次号、決断の瞬間につづく)

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