1997年12月11日。
この日は、パフが予定日(12月12日)通りに生まれるか否かが決定される
重大な日でした。
会社の設立は、設立登記日の前日に、資本金が全額銀行に払い込まれ、銀行か
ら「保管証明書」という書類が発行され、それを法務局に様々な書類とともに
提出・受理されて初めて法的に認められます。
逆に言うと、もし前日までに資本金が振り込まれないと、会社設立はチャラ、
ということになってしまいます。
もう一回振り出しに戻って、様々な面倒くさい書類をいちから作り直し、印
鑑をもらい直し、という大変なことになってしまうのです。
ふつう、独立・起業するような人間は、ほとんどの場合、自分自身の持ち金を
資本金に充てますので、資本金が払い込まれなくて会社が設立されない!なん
てことは、滅多にありません。
しかし、パフの場合はちょっと事情が違いました。
資本金に充当されるボク自身のお金は、全体のわずかに10%程度。
残りの90%は、約30名ものボクの友人や知人と「口約束」で交わしたお金
だったのです。
この「口約束」が実行されるはずの期限が、この12月11日なのでした。
12月5日~12月11日の一週間。土・日を除いた実質5日間の間に、約束
をもらった30名すべての人に、きっちりと銀行に行ってお金を資本金として
払い込んでもらわなければならない。
一人の脱落者?(表現悪くて申し訳ありません)を出すことも許されない状況
の中で、クギサキくんは、まさに「気が気でない」毎日を送っていたのでした。
ところで話は少し脱線しますが、資本金払い込みには、こんな面白い話もあり
ました。
以前から公私ともに親しくしていただいていた、とある映画会社の常務、Yさ
んに、出資のお願いでお会いした時のこと。
クギ : 「Y常務、そんなわけで、ぜひパフという会社の株主になっていただけ
ないでしょうか?」
Y常務 : 「んー。よし、わかった。クギサキさん、ちょっと待ってな」
Y常務は、こう言い残して、ふらーっと部屋の外に出かけていったのでした。
15分ほど待ったでしょうか。
Y常務は、銀行の紙袋を片手に、帰ってきたのでした。
Y常務 : 「クギサキさん、ほい、これ」
クギ : 「え?」
Y常務 : 「とりあえずは、5株分ね」
紙袋の中には札束が入っていたのです。Y常務は「ちょっと待ってな」と言っ
た後、なんと銀行に現金をおろしに出かけていたのでした。
クギ : 「い、いや、Y常務、あのー、いろいろ手続きもあるんで今現金でもらっても
困るんですけど…」
Y常務 : 「そんなのいいよ。お金預けておくから、手続きは全部やっといて!」
いきなり現金をポーンと手渡してくださった、このY常務の男気(というか何
というか…)には腰を抜かしてしまいましたが、何しろせっかく銀行まで
行っておろしてきていただいたお金を返す訳にも行かず、結局は資本金払込期
日までボクが大事に保管し、期日にボクがY常務の名前で払い込みを代行した
のでした。
このY常務、競馬ファンでもあるのですが、今は映画会社を役員定年で引退し、
パフの株券が万馬券(?)に化けることを(期待せずに)待ってくださってい
ることと思います。
脱線以上。
さて、話は戻って12月11日の正午。
銀行の担当者に、全員の払い込みが済んでいるかどうかの確認電話をしてみま
した。
銀行 : 「えーっと、あれー、クギサキさん。まだ3人の払い込みが済んで
いないようですよー。まずいですね…」
うあー!不安的中。
きっと払い込んでいないのは、あいつとあいつと、そう大本命は、Mさんだろ
うなー…。
パフ設立危うし!
(タイムリミットあと3時間なんだけど…つづく)
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