ひきつづき１９９７年１２月１１日正午。
この日の午後３時までに株主（見込み）３０人全員の出資金払い込みが完了し
なければ、パフの１２月１２日（イッチニイッチニ）の誕生は、絶望的に難し
くなってしまう。
ボクはヤキモキしながら、資本金払い込み事務担当の銀行員と電話で話をして
いました。
銀行 ： 「えーっと、あれー、クギサキさん。まだ３人の払い込みが済んでいない
ようですよー。まずいですね…」
え？３人…。すぐに浮かんだ顔は、学生時代からルーズで５年間大学に通
っていた後輩２人と、パフ設立のキッカッケとなったＲ社のＭ氏（と、今更な
がらわざとらしく名を伏せますが…）。
Ｍ氏の場合は、「人間の大きさ・考え方」という視点で見るとクギサキくんの
尊敬の念は世界一なのですが、「事務手続きの確実さ」という視点では、友人
の中でも、ワースト３に転落するのでした（ごめんね、ムライさん…）。
クギ ： 「３人が未払いですか…。やばいですねー。とりあえず、その３人に
至急、確認・催促してみますので、名前を教えてもらえますか？」
銀行 ： 「払い込んでいない人の名前ですか？あ、すぐ分かりますよ。でも３時ま
でに、銀行の窓口に来てもらわなきゃいけないんですけど、大丈夫です
か？」
クギ ： 「…。やってみるしかないっしょ！」
銀行 ： 「万一だめな場合は、釘崎さんが、その方々の名前で払い込みを
とりあえず行うということでもいいですよ。ほんとはルール違反です
けどね。 その人に成り済まして払い込んじゃってください」
クギ ： 「あー、そういうこともできるんですね。最悪の場合はそうしますか」
いくぶん気持ちは楽になったものの、３人分の出資金を立て替えるお金は？
…ない！！
どっちにしろ、危機は未だ立ち去らず、という状況でした。
銀行 ： 「えーっと、じゃー、払い込み確認ができない３人の方々ですが…」
名前を聞いたところ…。
２人は、予想通りルーズな後輩。しかも２人とも現職中学校の教師。
でも、もう１人は、Ｍ氏ではなかったのです。
（ムライさん、疑っちゃってホントごめんなさい！）
実は、絶対大丈夫だと思っていた、昔からの仕事仲間Ｓさんでありました。
（意外だなー、あの人が手続きを怠るだなんて…）
ともあれ、大至急３人に連絡を取らなければならない。
まずは中学教師をしている２人に電話。
「今頃給食中かな…」などと思いながら、それぞれの後輩が勤める中学校
に電話。
後輩１ ： 「あれー！今日まででしたっけ？まっずいなー、午後は授業がびっしり
で銀行に行けないですよ…」
クギ ： 「（おまえの授業を受ける子供たちの将来が心配だ…）
あ、そー、まー無理すんな。じゃ、俺が立て替えとくよ」
後輩２ ： 「あー、すみません！すぐ銀行にいきたいんすけどね…。
俺の中学校、ド田舎なもんで、銀行がなくて…来週じゃ駄目っす
か？」
クギ ： 「（そんなんだから教員採用試験何年も落っこちたんだよ！）
あ、あー、わかった。じゃとりあえず俺が立て替えとく…」
まーったくしょうがない後輩連中です。
でも、２人分なら、カードローンとかで借りれば立て替え払いも何とかなりそ
うでありました。
問題はＳさんだなー。どうしちゃったんだろう…。
Ｓさんの分まで立て替えるとなると、消費者金融に駆け込まなきゃ行けないな
ー…。 んー…。まー、ともあれ電話してみよう！
クギ ： 「あのー、Ｓさんですか？例の資本金の払い込み期日、今日までなんで
すが…」
Ｓさん ： 「ごーめんなさい！釘崎さん！今朝までバタバタしてまして、ついさっ
き○○支店に払い込んでおきましたよ。もう確認とれるはずです」
クギ ： 「あー、そうですかー！！！！！！！！！いやー、お忙しいところありが
とうございましたーーーーーーー！！！！！」
ほーっと一安心。その後銀行からも電話があり、Ｓさんからの入金が確認でき
たとのこと。
そして、すぐに、カードローンで後輩２人の出資分を借りて、払い込み銀行に
駆け込み、３時のタイムリミット直前に２人それぞれの名義で払い込み。
いやー危機一髪。滑り込みセーフ！という感じでした。
銀行 ： 「はい。これで、３０人全員の払い込み完了ですね。
いやー、こんな大勢の払い込みで会社設立する人なんて、私の行員
生活でも初めてですね。
まー、ともかくもおめでとうございます。
じゃ、明日の朝間違いなく『保管証明書』を発行しますから」
いやー、ほーんと、やれやれ…。
そして翌日。１９９７年１２月１２日。
『 株式会社パフ。資本金払い込み保管証明書。金１１，３００，０００－ 』
と書かれた書類を銀行から手渡された時には、感無量の思いがありました。
司法書士に作ってもらった書類一式とその「保管証明書」を携えて、大手町の
法務局へ。
終わった…（いや、始まった…かな？）。
これで、「株式会社パフ」を法的に誕生させる手続きが完了したぞ。
１０月上旬に、ムライさんと飲んで独立を決意してからちょうど２ヶ月。
なんだか、あっけないほど短時間に「会社」ができちゃったなー…。
でも、この２ヶ月の間の毎日、とてつもないパワーが自分の中に生み出されて
くるのが自分でも分かり、目に見えない力にグイグイと引っ張られるような感
覚でした。
「株式会社パフ…か…。なんだかまだ実感が湧かないなー…」
そう思いながら、ささやかな「設立記念パーティー」の準備をカミさんがして
くれている新富町の新事務所に向かっているクギサキくんでした。
（生まれちゃいましたか…結構あっけなかったね！次回最終回へつづく）
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