1999年3月27日。
ボクは緊張の日を迎えていた。
この日は、パフ設立以来、実質的に初めて開かれる株主総会の日だった。
1年前の会社設立直後にも、第一回目の株主総会は開かれている。ただ、そ
の時は、ボクの知人・友人だけの、いわば気心が知れた仲間うちだけの株
主総会だった。
しかし、今回はまったく事情が異なる。前年の9月に公募増資を行っており
見ず知らずの株主が30人ほど増え、総勢50名になっていたのだ。
その総勢50名に対して、商法に基づく「定時株主総会」をきっちりと行わ
なければならない。
この株主総会での報告事項である決算内容。
公募増資時の公約だった売上げ・利益の金額には程遠い状態で決算を終えて
いたのだ(計画では、収支トントンのはずだったのだが、実際には大赤字決
算だった)。
会社の純資産は、「え?これが株式会社の純資産!?」と思えるくらいの小
額で、実質債務超過の状態にあった。
そんな状況での株主総会である。
いったい、どんな罵声が浴びせられるのか…。TVでよく見かける、不祥事
企業の株主総会の、頭に血の上った株主が社長に食ってかかるシーンが脳裏
をよぎっていた。
株主総会のやっかいなところは、ふたを開けるまで、いったい誰が来るのか
わからないところである。
出席できない株主は、予め委任状を送ってもらうことになっているが、来る
意思ある株主は、委任状を送り返してこない。
この日、委任状は10枚程度しか返ってきていなかったので、最大40人の
株主が参加する可能性があるのだ。
「いったい何人の株主が来るんだろう…」
「この大赤字の決算に対して、どんな意見や質問が飛び出すのやら…」
計画通りの業績を残せなかったことについては、何の申し開きもできない。
ここは腹をくくって詫びるしかない。そして、これから先の展望を語り、理
解を求めていこう。そう心に決めていた。
総会開始の定刻は、午前10時。ボクをはじめとする役員陣は9時過ぎから
会場で待機していた(役員陣といってもボク以外は皆、非常勤で実務には
まったく関与していない人たちである)。
定刻まであと15分くらいとなった頃から、受付に何人かの人たちが並び始
めていた。
皆はじめて見る人たちばかりである。30代くらいの人から、初老の人まで
いる。
定刻の10時となった。
結局、集まった株主の数は、8人程度。
しかし、8人とはいえ、素人経営者を緊張させるには十分な人数であった。
司会役のパートの女性の開会宣言で、ついにパフの株主総会は始まった。
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