自転車操業物語 プロフィール
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  第44話    「売れる⇒売れない⇒売れっこない!?(中編)」    
1999年8月。

9名の学生インターンシップ・即席営業マンたちの活動が、一斉に始まった。
皆、ロールプレイングゲームで練習したとおり、懸命に企業に向けて電話す
る。

「『パフの就職応援ページ』を運営している株式会社パフと申します…次年
度の採用に向けた企画をウンチャラカンチャラ…」

しかし、なかなか思うようにアポがとれない。
いや、全員ではない。
アポがとれるものとれないもの、かなり差があったのだ。

電話の話し方、呼吸のおき方、対話の仕方で「さもありなん」という感じだっ
た。

アポがとれている学生は、電話でちゃんと「会話」をしている。
アポがとれない学生はマニュアルどおりの「一方通行のスピーチ」をしてい
るだけである。

それは営業訪問の時にも現れた。

やっととれたアポなのに「会話」ができないのである。
ある企業から相当に怒られて帰ってきた。相手の話も聞かずに、質問にも答
えずに、とにかく覚えていることを喋りまくっていたらしい。

こうして、8月のお盆前には2名のインターンシップが脱落した。

1名は、何の連絡もなく会社に来なくなってしまった。
1名は、毎日のように何かしら言い訳をしながら出社を拒み続け(おじいち
ゃんやおばあちゃんのお葬式が何回もあったり…)そのうち、「もう一回就
職活動をしたい」という理由で辞めていった。

2名とも大手企業に内定していた学生である。

「入社前に鍛えるどころか、かえって自信をなくさせちまったかな……」。

ボクは少し申し訳ない気持ちにもなった。

しかし、世の中そんなに甘くない、というのが分かっただけでも彼らにとっ
ては収穫だったと思うように努めた。

残り7名の学生は、アポはそこそこに取れ、営業訪問でも企業の人事の人たち
とそれなりのコミュニケーションはとれていたが、「売上げ」という成果をあ
げるまでには至っていなかった。

「パフの商品って、企業には必要ないんじゃないか?」
「もっと安くしなければダメなんじゃないか?」
「結局大手就職サイトには、かないっこない!」

8月下旬くらいには、そんな愚痴っぽい声が彼らから聞こえてきていた。

彼らの気分が落ち込んでいたそんなある日。
さらに皆を恐れさせるニュースが、日経新聞の一面に踊ったのだった。

(恐れさせるニュースって?…つづく)

 
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