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  第46話    「パフの就職事業に対する考え方」    
1999年9月末。

パフのインターンシップ受け入れ期間は終了した。

インターンシップの中に、野口君という東洋大学4年生の学生がいた。

この野口君、最初の頃は電話がとてもぎこちなくて、ずいぶん心配したもの
である。

ところが日を経るごとに、みるみる上達していき、他の誰よりも多くのアポ
をとり、最終的には、営業訪問数はダントツの一位になっていた。

大学ノートにしたためた彼の日報には、日々営業で感じたこと、お客さんの
言葉、自分の課題などが克明に記されていた。決して器用なタイプではない
が、コツコツと努力を積み重ね、徐々に実力を開花させるタイプの人間だ。


そんな野口君がインターンシップの期間が終わりに近づいたある日、ボクに
こういった。

野口 : 「釘崎さん、俺、悔しいっすよ。夏休みの2ヶ月間、こんなに時間をか
   けてインターンシップやったのに、ほとんど結果が出なくて。
   俺いったい何やってたんだか……」

釘崎 : 「でも、お前、一生懸命やってるじゃないか」

野口 : 「何百社も電話して、何十社も訪問して、パフのこと分かってもらえた
     のは、ほんの数社しかなかったんですよ」

一生懸命やったものにしか分からない悔しさだろう。
それだけ彼は、本気で仕事をしていたのだ。

野口 : 「パフのことを、いくら説明しても、人事担当者は全然わかってく
     れないんです。『話は分かるけど…』っていうけど、実は全然分
     かってもらえていなかったんです」

人事担当者が悪いわけではない。もちろん野口君の営業が悪いわけでもない。
パフは分かりにくい、売りにくい商品だったのだ。

ボクはパフのことを、十分周囲に伝えきれていなかったのだ。
いや、その努力を怠っていたのだ。

先日「eキャリア」の記事が新聞に出たときにも感じたことだ。

パフが大事にしなければならないこと『学生の視点で「就職」を考えること
が、結果として企業の採用の成功を生む。そのためには「顔の見える就職と
採用」が必要なのだということ』を、しっかりと内外に伝えなければならな
い。

ボクは「パフの就職事業に対する考え方」という文章を作成し、サイト上に
掲載することにした。

以下がその文章である。

---------

パフは、就職を真剣に考える人たちの応援を一生懸命行う会社です。

(中略)

パフはあくまで「就職活動を行う人たちの視点」で事業を行う会社になりた
いと強く願っています。
しかし、それは企業に対し反目することではありませんし、求職者に迎合す
ることでもありません。

就職を希望する人たちが一生懸命「職」を考える環境をパフは創り出してい
きたいと考えていますが、これは「人の採用や育成」を一生懸命考えて下さ
る企業があってはじめて成立することであります。

パフは、そのような企業の皆さんと一緒に、真正面から「就職と採用」につ
いて考えていきたいと考えております。

そして、求職者には「顔を見せる就職」を、企業には「顔が見える採用」を
提案したいと思っています。

パフは、インターネットで情報を発信している会社でありながら、インター
ネット求人の仕組みだけに頼って採用を行おうと考えている企業に、危機感
を強く覚えている会社です。

一方で、インターネットだけで会社研究や会社訪問、あるいはOB訪問まで
やった気になっている学生が多くなってしまった風潮に対しても、強い危機感
を持っています。

もっと人間らしく顔と顔を見ながらの就職と採用を行ってほしい、インター
ネットは、そこに到達するまでの単なる手段に過ぎないと考えています。

ですから、パフは情報を掲載する会社の数を競ったり誇ったりしません。
「お金さえもらえれば何でもあり」のような広告掲載や仕組み作りは一切行
いません。

たとえ少数でも、パフの考え方に共感してくださる企業がいれば、その企業
を求職者に紹介することがパフの価値だと考えています。

(中略)

パフのこうした考え方に対して、「そんな建前だけじゃ企業は生き残れない」
というご批判を頂戴することもあります。

しかし、このようなスタンス、コンセプトを堅持しながら企業として事業を
成立させることこそが私たちパフの存在価値だと信じております。

随分と生意気なことを書かせていただきましたが、こんなことを考えている
会社がパフです。

みなさまのご意見を、ぜひお聞かせいただければ幸いです。

---------

サイトに載せるだけではなく、営業では必ず、この文章を企業に見せること
にした。

「パフってこんな会社で、こんなこと考えながら仕事してますっ!」

営業をするたびに、(たとえ断れたにしても)なんだかとてもスッキリして、
晴れ晴れとしてくるのが分かった。

そして1999年10月。あの大物企業が、パフへの協賛を正式に決定しよ
うとしていた。

(あの大物企業って?…つづく)

 
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