1999年12月31日。
パフが設立されて丸2年が経過した大晦日の日、ボクはひとり事務所でこの
1年間を振り返っていた。
パフがこれから生きていくために「大事にしなければならないこと」は何な
のか?
「やってはいけないこと」は何なのか?
こんなことを、ぼんやりと考えていた。
ところで、なぜ大晦日の日に、ボクはひとり事務所にいるのか?
この日は世に言う「2000年問題」が発生するかもしれない、コンピュー
タシステムにとって「大きな危機」の日だったのである。
コンピュータを動かすプログラムには「日付」を使って時間計算をしている
ものが非常に多い。
西暦の4桁を全部使って計算していれば問題ないのだが、下2桁だけを使っ
て計算していると、2000年を超えたとたんに誤動作を引き起こしてしま
う。それが「2000年問題」というやつだ。
例えば、1990年ら1999年まで、どのくらい経過しているかを計算する
としよう。すると「99-90=9」だから9年間という計算が成り立つ。
ところが1990年から2000年まで、となると、「00-90=-90」
ということになり、-90年間という、ありえない期間になってしまうのだ。
コンピュータのプログラマというのは、その場しのぎのプログラムを作成す
ることが多く、この「プログラムミス」はかなり多くのシステムの中に含ま
れていると言われていた。
あのマイクロソフトですら、OSのウィンドウズの中に、この問題が含まれ
ていたらしい。
パフのサーバーの中でも、いろんなプログラムが動いている。
ボクは何か問題が起こっては大変!と、1999年最後の日を事務所の中で
過ごすことに決めたのだった。
2000年1月1日、午前0時。
サーバーの全プログラムに異常がでていないかどうか、ドキドキしながら見
守った。
……。何も問題は起こっていないようだった。
冷蔵庫に入れてあった酒とつまみを引っ張り出し、あらためて1人で正月を
祝った。
「今年こそは、会社らしい会社を作るための第一歩にしよう!」
新たな決意の元に、パフの3年目は始まったのだった。
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