僕とKは、市内でイチバン「長崎ちゃんぽん」が美味しいという評判の店で、
フィリピンの船乗りさん3人と一緒に食事をした。
その後、せっかくだから一緒に市内観光をしようということになった。グラバ
ー園、大浦天主堂、平和公園、唐人屋敷などなど。僕とKと船乗りさんたちは、
日が暮れるまで長崎の街をブラブラした。
一日中慣れぬ英語(とはとても呼べない言葉だが…)を喋っていたおかげで、
僕はかなり疲れてきていた。
船乗りさんたちも多少は気を遣ってくれたのであろう。そろそろ解散しようか、
ということになった。
Kは別れ際、船乗りさんたちにフィリピンの住所を聞いた。途中たくさん撮っ
た写真を現像してフィリピンに送るためだ。Kはとても気の利く、いい奴だった。
話は外人さんたちと別れたあとの長崎の夜。
僕とKは、小高い山の中腹にある小料理屋さんで、お酒を飲むことにした。
長崎の百万ドルの夜景が見渡せる、絶景のお店だった。
飲みながら中学生の頃の話に花を咲かせた。このころ僕とKは20歳。中学生
の頃といっても、たかだか5年前のこと。それでもずいぶんと大昔のことに感
じたものだ。
Kとお酒を飲んで、2人だけでゆっくりと話をしたのは、後にも先にも、この
ときだけだった。この夜は小料理屋でカラオケを唄ったりして、大いに盛り上
がった。とても楽しいひと時だった。
Kとはこのあと、2回だけ地元の湯布院で会ったが、他の同級生たちと一緒の
席だったので、この夜以上の話をすることは、ついに一度もなかった。
・・・そしてKは、それから2年後、地元の人と結婚した。そう、実はKとい
うのは、僕が中学生時代に好きだった女の子。ショックだった。
僕がそのこと(Kが結婚したということ)を聞いたのは、直接ではなく中学時
代の恩師である中島先生から。Kは、「クギサキくんによろしく伝えて欲しい。
長崎での外人さんたちとの市内観光は、とても楽しかった。いい思い出になっ
た、と伝えて欲しい」と中島先生に言っていたそうだ。
フィリピンの船乗りさんたちとの出会いに託けて書いた今回のコラム。実は最
も書きたかったのはこのKとの話だった。
ということで26番目の出会いは、フィリピンの船乗りさんたち。そして、
このエピソードの陰にあるKとの再会の話でした。
<追記>
「第11話湯布院中学3年1組」でもKのことに触れていますので、興味の
ある方は、バックナンバーからどうぞ…。
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