釘さんの100の出会い プロフィール
バックナンバー一覧へ
 
  <第54話> 「零細ベンチャーS社のO社長との出会い (その4) 」   2005/12/12  
 
僕は後日、S社に追加の提案を行うことにした。

まずは会社案内。会社案内がない会社なんて、クリープを入れないコーヒー
みたいなものだ(と、この冗談は誰にも通じないか? ま、いいや)。

当時S社には、学生が会社に足を運んだときに、渡すものが何もなかった。
「そりゃまずいっしょ!」ということで、100万円程度のものを提案した。

それからDM。知名度のまったくない会社のことを効率的・効果的に知らせる
には、DMが当時としては最適な手段だった。このDMにはフィードバック葉
書を同封する。興味を持ってくれた学生には即座に返信してもらうためだ。
もちろん切手など貼る必要はない。料金は受取人払いである。このDMの費用
が、たしか200~300万円程度だったと思う。

先に受注していた情報誌と併せると、500万円程度の提案だ。果たして受け
入れてもらえるのだろうか。でも、受け入れてもらわなければ、まずこの会社
の採用の成功などあり得ない。

・・・結論からいうと、O社長はすべて受け入れてくれたのだった。

「もう、ぜんぶ釘ちゃんに任すよ。頼んだよ!」

なんとも嬉しいひとことだった。そこまで俺のことを信用してくれるのか。
こんな経験の浅い、一介の売れない営業マンでしかない俺のことを……。

それから僕は、この会社の採用を、受注した仕事の範囲を超えて手伝うように
なった。

3日に1回は事務所を訪問して、届いている資料請求葉書を整理したり、直接
学生に連絡したり、会社訪問の段取りをセッティングしたり。まるでS社の採
用担当者みたいなことを行なうようになっていったのだった。

数ヶ月が過ぎた。資料請求の葉書は何十枚か届いたものの、実際にS社を受験
してくれる学生は、誰一人として登場していなかった。

やっぱり、社員が10名もいないような名も無い会社では、新卒採用は所詮無
理なんだろうか……。

お金だけたくさんもらったにもかかわらず、成果がまったくあげられなかった
ことに、僕はかなり落ち込んでいた。

そして、重大な決心の言葉をO社長に伝える日がやってきた……。 (その5へつづく)

<< 前のコラムへ 次のコラムへ >>
 
バックナンバー一覧へ