前回の、三期生ナガサキを紹介するコラムに、
「この年の内定者は、ナガサキ以外にも実は2名いた。が、その2名は、やむ
を得ぬ理由から、入社直前にパフへの入社を取りやめる(つまり内定辞退)す
ることになった。」と書いた。
今回は、その当事者のひとりである幻の三期生が主人公である。
名前を梅木麗美(うめきよしみ。以降、ウメキ)という。
2004年の年が明けて間もないころだった。正式入社を目前にして「パフへの入
社を考え直したい」と、突然、相談された。
僕は有楽町の喫茶店にウメキを呼び出し、詳しい話を聞くことにした。
「このまま卒業してしまうととても悔いが残る。もう一年、大学に残りたい。
大学に残って、納得のいく卒業論文を書きあげたい」
これがウメキの内定辞退の理由だった。いや、正確にいうと、ウメキから申し
出があったのは「内定辞退のお願い」ではなく、「入社延期のお願い」だった。
ウメキは岩手県の進学校から東京大学に現役で入学した才媛である。その明晰
な頭を活かして、システム関係の仕事に就いてもらいたいと考えていた僕は、
この「入社延期」の申し出に戸惑った。
ここでウメキの申し出どおり1年間待ったとして、果たして1年後、ウメキは
本当に納得してパフに入社するのだろうか?大学に残って勉強を続けたい気持
ちがあるのは本心だとしても、パフに入社することには、いささかの迷いがあ
るのではないだろうか? 「自分はこれからパフでやっていくんだ」という覚
悟は、少なくとも生まれないのではないだろうか?
僕はそう思った。
そして、ウメキにはこう言った。
「大学に残ることは承知したし、この春、パフに入社しないことも承知した。
しかし、『延期』は承知しない。いったん、『内定取り消し』とする。つまり
ウメキからみれば『内定辞退』としてほしい」
さらにこう続けた。
「ただし、ウメキがパフに入社したい気持ちが本物なら、次年度の新卒採用に
再度応募するのは、ウメキの自由だ。ただし、再度内定が得られるかどうかは、
わからないけどね……」
それから2ヶ月ほど後のこと。
新卒四期生を採用すべく行った会社説明会に、ウメキの姿があった。2ヶ月前
に有楽町の喫茶店で会った時とは比べものにならないくらいにスッキリした顔
のウメキを見たとき、僕はとても嬉しくなった。
パフの先輩社員たちも「やった! ウメキ、パフを応募してくれたんですね!」
と喜んでくれた。
そしてその後、何ステップもの選考を見事通過し、僕の最終面接まで辿り着い
た。
僕の最終面接で確かめたかったのは、ウメキの「覚悟」だけだった。
ウメキは、その気になりさえすれば、どんな大企業でも、有名企業でも、合格
するだけの能力と学力を有している。だからこそ「覚悟」が少しでも揺らいで
いると、パフのような弱小企業で働くことが辛くなってしまうのだ。
最終面接でウメキと交わした会話の冒頭5分程度で、その心配は消えた。ウメ
キから発せられる言葉や表情には、確固とした「覚悟」を感じ取ることができ
たからだ。
ウメキは、二度目の内定者時代を、パフで働きながら過ごした。特に10月から
11月にかけて、「リニューアルしたサイトがオープンできない」という大きな
アクシデントに見舞われたことがある。システム開発を委託している会社の会
議室で一緒に寝泊りをしたり、「内定者にそこまでやらせるか?」という困難
な仕事を、あたりまえのように任せていた。
現在では、社内システムの運営や、学生やお客様向けWebシステムの企画・
設計や、数多くのパートナー企業の皆さんとの協働作業に、パワーを発揮して
くれている。また、パフ創業10周年記念プロジェクトの主要メンバーとしても、
その存在感をさらに強めている。
そうそう、会社にかかってくる電話をいち早く取るのもウメキだ。「パフは、
お客様の電話対応が丁寧である」との評価を頂戴することが多いのだが、これ
は、ウメキが周囲の手本になってくれているおかげだと思う。
最初の出会いから数えると、早5年目となる。これからも、後輩達のよきリー
ダーとして、会社にプラスの影響を与え続けていってほしい。
ということで90番目の出会い。幻の新卒三期生であり、正式には新卒四期生
であるウメキこと、梅木麗美との出会いでした。
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